母のこと④ 〜世話をするスイッチへ切り替える〜
叔母の葬儀では、
たくさんの親戚と顔を合わせましたが、
母は声に張りがあり、
93才とは思えない速さで、
キッパリした物言いをするので、
一瞬は、変わらずお元気だなぁと感じさせたと思います。
高齢者ですから、服装については私に責任がある感じがあるのですが、どう思われているかも気にならず、ただただ母の全てを観察していました。
一泊二日を過ごしていると、昔の話が噛み合わなかったり、相手の名前を間違ったりで、
だんだんに、他の方にも、あーそういうことかー、
という空気が広がっていきました。
結果的に親戚と会ったのは、この時が最後となりましたが、
とりあえず元気な母に会ってもらえて、
母も会えて、
これもギフトでした。
葬儀から戻り、
私は、母との距離を切り替え、
世話をする、というスイッチを入れました。
ハラを決めないといけません。
先ず急がないと、と感じたのは、お金の管理です。
自分のお金がどうなっているのか、
何も分からなくなっていて、
どこから何が引き落とされているのか、
毎月どれだけ収入があり、
どれだけ生活費がかかっているのか、
そこから聞き出さなくてはいけませんでした。
通帳もキャッシュカードもどこにあるか分からないと。
ヘルパーのサービスも拒否して、
絶対誰も家にあげない母でしたが、
全ての通帳の再発行は大変なので、
留守に、置くならこの辺りのはず、
というところを探しましたが本当に見あたりません。
家の整理整頓は、とっくに無理になった感じで、
雑然としているので、
私は諦め、再発行の手続きに入りました。
通帳もなく、ハンコもなく、
本人の返答もあやふやで、
私は結婚して姓が変わっているので、
娘であることを証明するところからで、
その娘が再発行を依頼するわけを、
銀行に理解してもらうこともしないといけないので、
これは本当に一苦労で、
時間もかかりました。
ただ、
私に世話になることなど全く考えていなかった母が、
物言いは上から命令口調のままですが、
面倒をかけて悪いねえ、
という態度ではいてくれて、
助かりました。
変なことを言っているようですが、
本当に私に対しては、
指摘と指導しかなかったので、
それがこの手続きの間無かったことは、
大きな救いだったのです。
新しい母の通帳に記帳をすると、
2ヶ月ほど前までは、きちっと管理されていて、
お金の流れもすぐ分かり、
振り込みや引き落としは3つの銀行に分かれているのに、
数ヶ月は残金で回るようにしてあって、
まだどこにも残金不足が起こっていない。
自分が分からなくなることが分かっていた、
そんな気がしました。
これはこの後も最期まで、
どんなことでも、
自分では少し先が分かって、
母なりの準備をするんだな、
と思わされたことが多く、
認知症と、
そういうことが分かることは、
きっと違う機能なのだと思いました。
1ヶ月に渡った金融関係の手続き作業で、
母も、
娘の助けが必要だと少しは思ってくれたようで、
新しい関わり方が自然と決まって行きました。
つづく